ビールで乾杯
 翌朝、真理はがっちり抱き込まれていて、身動きがとれない状態で目覚めた。
 頭をゆっくりと左右に振って顔を上げると、佑都が優しい眼差しを向けていた。

「お前、酒強過ぎんだよ」
「佑君、面白過ぎ~」
「最悪……」
「嘘……可愛かった」
「うるせえよ」
「ねえ、昨日言ったこと、覚えてる?」
「何? ああ、お前が俺を襲おうとしてた話なら覚えてる」
「もうっ、やだぁ」

 真理が振り上げた拳を、すかさず佑都が掴む。

「真理。……それ」

 佑都はその手を緩め、真理の手元を顎で指した。

「え?」

 真理の薬指には、いつの間にかリングが重ね付けされていた。
 ひとつは付き合ってすぐに佑都がプレゼントしてくれたもの。
 もうひとつは――

「何年も仕舞い込んでたから、ちょっとくすんでるかもしんねえけど、俺の気持ちは今も全くくすんでねえから心配すんな」

 佑都が言うのだから……
 きっと大丈夫。
 心の底からそう思えた今が、自分の『結婚適齢期(それ)』だ、と真理は思った。





【完】
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