The Tricks Played by Destiny
額に汗が滲む。雫が頬を伝り一筋の線となり顎に伝った。
この、ただ待つだけの時間に恐怖があたしを襲う。
視覚を封じたら、その対償に他の感覚が鋭くなる。肌でこの緊迫した空気を感じる。ビリビリと皮膚を刺すような冷気。


生を諦めたあたしに死を恐れさせるこの短い時間。


殺気に圧倒される。
気を失ってしまいそうな、鋭く尖った感情。


もっと、もっとと鋭くなる感覚にあたしは耐え切れない。
早く一思いに、と願ったそのとき。

ふつりとそれが切れた。
部屋に充満していた、重くそれでいて鋭さを忘れない空気、――殺気がどこかへ消え去る。


押し潰されそうになっていたあたしは、それが切れた瞬間。思わず息を吐いた。いつのまに息を止めていたらしい。それほどまでの本気。

あたしを殺すと決めた、殺すことに躊躇いを持たない本気の殺気。
圧倒されないわけがない。


あたしだって、普通の女の子として生きてきたわけじゃない。
金色の髪を持って産まれていたにも関わらず、それ以下の生活だった。

人の視線、殺気とは隣同士だったはず。
肌に馴染んだものだったはずなのに。


圧倒された。
もうだめだ、と全身の筋肉が弛緩してしまう程に。


けれどそれは唐突に止んだ。
今は向けられていない。
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