The Tricks Played by Destiny
よくわからない、世界に今、立っている。

そう、とまだ理解が及ばないまま、床に手を滑らせて、痛みが走る。



「どしたぁ」



指先に刺さった木のはしくれに、眉をしかめた。
思いの外深く刺さったのかポタポタと血が垂れる。



「大丈夫かぁ?」



へっへっ、と息荒いのに、空気だけが震える声が届く。
服に垂れないように指を持ってくると、口に含む。口の中に広がる鉄の味。



「ジーク」



小さな舌打ちのあと、手を取られた。

ぬるりと生暖かい感触。
あっという間の出来事だった。
声を上げる暇もなく、呆然と


綺麗に傷が治ったのはそのおかげだったのか。
ヴァンパイアの唾液には治癒効果があると言われてるのは本当なわけだ。
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