The Tricks Played by Destiny
「起きたか」



一瞬、込み上げてくるものがあったけど、それに息を詰めて耐えると声を聞いた。

そして、今度は鼻を刺す匂い。
生臭い、……。



「どうなってるの」

「半分でも、お前は人間ってことだろ。今まで人間の間で生活してんだから、身体の芯まで人間臭さがあるんだよ」

「……さっきのは?」



よだれをたらした獣と目が合った瞬間、本能が危険だと告げて身体が凍りついた。
すぐにブラックアウトしてしまったのだけれど。



「…………撒いた」

「そ、そんなっ。…………、そ、そうね」



そんなはずがない。
生臭い匂いがそうさせている。たとえ、水で洗い流したとしてもあたしの嗅覚はその微かな匂いさえも捉える。
けれど、反論を許さないジークの鋭い眼光があたしを射抜き、無理やり飲み込んだ。



「起きたのなら、水浴びして来い。この裏に温泉が湧いてる。レオ」



それまで伏せていたレオが、むくりと立ち上がり、尻尾を一振り。
付いて来いとまるで言ってるみたいだ。



「もしかして護衛?」

「うるさい、ぼけぇ」



…………血生臭い想像を駆り立てていたあたしのその一言はふと気の休まるものだった。
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