The Tricks Played by Destiny
少し熱めの湯に手をつけて、身体を沈めた。
レオは温泉に背を向け、行儀良く伏せをしている。ときおり揺れる尻尾が起きていることをあたしに知らせてくれる。


脱いだ服に、所々茶褐色が染み込んでいた。
その血痕を落としたかったけど、着替えがない。

ジークやレオにとっても急襲だったに違いない。
撒く、と言ったジークの言葉どおり荷物は何一つなかった。

あたしはもともと何も持っていなかったけれど。


このまま、あたしはどうなるのだろうか。
こちらの世界で生きていくと決めた。自由を手に入れたと思っていたのに、中途半端なあたしの出自があちらもでこちらでも邪魔をする。


ただ、あたしはあたしらしく生きていたいだけなのに。


カサリ、と木を掻き分ける音が近付く。
まだ、夕暮れ。
目を凝らして身構えながら、気配を探る。
けれど、気が動転してるのか上手く悟ることが出来ない。


レオが、立ち上がらないところを見ると危険はなさそうだった。
< 44 / 60 >

この作品をシェア

pagetop