The Tricks Played by Destiny
ジークに訊くよりは。


のぼせる寸前まで浸かった温泉から、じゃぶじゃぶと上がる。
ピクリと音に反応したレオの耳が後ろを向いたのが分かった。

簡単に、水分を払うとジークが持ってきた衣服に袖を通す。レオは見ていないと分かっていながら、背を向けて。



「ああ言ってはいるが」



着替え終わったと同時に声が掛かった。
まるで、見ていたかのようなぴったりのタイミングだった。
驚いて振り返ってもレオはさっき見たまま、あたしに背を向けて伏せたまま。



「……向こうはどういったところなんだ」



一瞬の間があったあと急に話題が変わって、付いていけない。

どう、と言われても。



「こっちに来たのも、その傷だらけの身体が原因なのか」



もう跡形も残っていない、古傷のあった場所を衣服の上からさする。
一生残る傷だ、と覚悟したはずの傷。


今も。
見えなくなった今でさえも。

ありありと思い出せる。
傷跡も、それをつけた男も、状況も。
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