The Tricks Played by Destiny
口が動いていないにも関わらず、空気を震わす不思議な声を出す狼。
レオが初めて獣のようにワフッと吠えた。


慰めて、いるのだろうか。

思い出すだけで、震える身体を気遣ってか。


足音を立てずに近付く大きな狼が、あたしの足に擦り寄る。
レオは狼であるにも関わらず、人と見なしていた。
それがこんなふうに獣っぽく、狼っぽい仕草をする。



「思い出させるつもりはなかった」



お座りをしてあたしの顔を見上げるレオの隣に座り込んだ。
ゆっくりと、身体をレオに預けるとごわごわした体毛が濡れた肌に張り付くけれど。

目を閉じた。
いつでも、思い出すことが出来る。
心にまで刻み付けられた見えない傷跡。
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