The Tricks Played by Destiny
じめじめとした空気、あたしまでもカビてしまいそうな湿気の部屋、とも言えない空間。もっと、適切な言葉を知っているけれど口にしたくもない。ゲス野郎いわく、お仕置き部屋らしいが。

剥き出しの石畳にぽつんと置かれた椅子に座り後ろ手に鎖を厳重に、幾重にも巻き付けられ、身動きするたび、鎖が擦れて手首に傷を残す。

もう何日も外されることなく鎖が巻き付けられている手首は赤く擦れ、血が滲む。


ひりひりと痛みが途切れることなく続き、どこが痛むのかわからないくらい感覚が鈍っている。


無駄な抵抗とわかっていながら、また腕に力を入れて逃げ出そうと試みる。
けれど、



「ここからは逃げられはせんぞ」



いつの間にか、この部屋にもう一人の人間。

鎖を鳴らして、奴に飛び掛かろうとしたのに。
胸の下で、それを強調するように椅子とともに同じく鎖で捕らえられている身体はバランスを崩すだけ。

ニマニマとその欲望を隠しもせずに近付いてくるゲス野郎を睨み付ける。



「おぉ、怖いな。そんな顔をしたら台無しじゃないか」



さるぐつわさえ噛まされていなければ、侮辱の言葉の一つや二つ、簡単に浴びせてやれたのに。
言葉にならない喉の奥で響く音だけで、威嚇する。

手の届かない範囲であれば、いくらだって奴を睨み付けられる。怖いことなんてない。

けれど、触れられる距離まで近付けられれば。
身体が記憶している恐怖に逆らえない。
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