オタクが転生した結果
沼に嵌まってるのはテオドリックだけではない。

テオドリックの社交界デビューとなる一年後の舞踏会は、ヒロインが登場する重要なイベントでもあった。年下のクリスティーヌはデビュー前だが、王子の婚約者として出席する事になっている。

今日は舞踏会に着て行くドレスを決める為、マルゲリット達がクリスティーヌの私室に集まっていた。

マ「やっぱり赤がいいわよね?」

エ「でも黒の方がそれっぽく見えるかも、、差し色に赤を多めに入れてもいいわね」

マ「確かに、、ありよりのありだわね。デザインはどうする?」

エ「クリスティーヌ様は年の割にスタイルがいいから攻めたデザインも悪くないけど、、悩ましいわね」

マ「成長期だし一年後にはまた雰囲気が変わってるかも、、う~ん、、」

クリスティーヌ完全放置で盛り上がるマルゲリットとエメリーヌ。2才年下のジゼルは舞踏会に参加できない事に納得がいかずに拗ねていた。今はソファーに座ってお菓子をやけ食いしている。

「あの、、」

デザインに悩んで動きが止まったマルゲリット達に、クリスティーヌが話しかけた。

「実は、、テオドリック様が、、舞踏会で、、み、水色のドレスを着て欲しいと、、」

テオドリックが自分の色を纏って欲しいと望む事の意味を正確に把握しているクリスティーヌは、隠しようもなく照れていた。それをマルゲリット達に伝えるのが恥ずかし過ぎて、身を縮めて震える彼女は、今にも消えてなくなりそうな程に儚げだった。

ジ「グハッ!」

ジゼルが食べていたお菓子を口から吐き出し、悶絶している。令嬢としてそれはどうかと思うが、ここはひとまず置いておく。

エ「尊みが過ぎる、、」

エメリーヌがその場で膝をつき、天を仰いで祈り始めた。妄想が溢れ出しているのだろう。

マ「もう駄目!堪えられない!こんなの沼落ち必須じゃないのおおお!」

マルゲリットは頭を抱えて泣き叫んでいる。最早正気を保てていないが、精神的には更年期に差し掛かっている可能性は否めない。

この日をもって、マルゲリット達によるクリスティーヌ悪役令嬢化計画は終了する事となる。

そして、彼女達の推し活が始まった。

これまで、クリスティーヌがヒロインを虐める未来が全く見えず、辛く苦しい5年であった。

だがこれからは違う。

彼女達は正々堂々と推しを応援できる喜びに奮えていた。そして、クリスティーヌを天使へと昇華させる為、全勢力を出しきる事を熱く誓い合ったのだった。
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