新そよ風に乗って ⑤ 〜慈愛〜
「高橋。やっと、お局達から離れられたみたいね」
「ゴホッ……」
売掛のテーブルの方を見ようとした途端、咳き込んでしまった。
「大丈夫? 矢島ちゃん」
「は、はい。大丈夫です」
ちょうどその時、会計のテーブルの直ぐ横を、香水のきつい女子社員が3人通り過ぎようとしていた。
「あれは、犯罪よね。本人達は、鼻が麻痺してて気づかないんでしょうけど、こっちは堪らないわ」
「ゴホッ……ゴホッ……」
「分かった。私に任せて」
「きっと、上手く行くから……」
通り過ぎていった3人のそんな会話が聞こえてきたが、今はそれどころではなかった。
「大丈夫?」
「は、はい」
少し落ち着いたので、ウーロン茶を飲もうとした時だった。
「キャーッ!」
「ちょっと、大丈夫?」
な、何?
「高橋さん。大丈夫ですか?」
「スーツが……」
「ああ。俺は、大丈夫」
「大丈夫じゃないですよ。そんなに、汚れてしまって。ホテルのクリーニングに出した方がいいんじゃないですか?」
「いや、大丈夫だから。ありがとう」
「でも、高橋さんのスーツが台無しに」
「大丈夫ですか?」
「……」
「美奈。大丈夫?」
見ると、高橋さんのジャケットにジュースが掛かったのか、だいぶ濡れて汚れてしまっていた。直ぐ傍の席に座っていた売掛の人が、盛んに心配して話し掛けている。その場を見ていなかったので、どうしてそうなったのかは分からないけれど、何故か女子社員が高橋さんの両手を掴んで目の前に座り込んでいた。
「ゴホッ……」
売掛のテーブルの方を見ようとした途端、咳き込んでしまった。
「大丈夫? 矢島ちゃん」
「は、はい。大丈夫です」
ちょうどその時、会計のテーブルの直ぐ横を、香水のきつい女子社員が3人通り過ぎようとしていた。
「あれは、犯罪よね。本人達は、鼻が麻痺してて気づかないんでしょうけど、こっちは堪らないわ」
「ゴホッ……ゴホッ……」
「分かった。私に任せて」
「きっと、上手く行くから……」
通り過ぎていった3人のそんな会話が聞こえてきたが、今はそれどころではなかった。
「大丈夫?」
「は、はい」
少し落ち着いたので、ウーロン茶を飲もうとした時だった。
「キャーッ!」
「ちょっと、大丈夫?」
な、何?
「高橋さん。大丈夫ですか?」
「スーツが……」
「ああ。俺は、大丈夫」
「大丈夫じゃないですよ。そんなに、汚れてしまって。ホテルのクリーニングに出した方がいいんじゃないですか?」
「いや、大丈夫だから。ありがとう」
「でも、高橋さんのスーツが台無しに」
「大丈夫ですか?」
「……」
「美奈。大丈夫?」
見ると、高橋さんのジャケットにジュースが掛かったのか、だいぶ濡れて汚れてしまっていた。直ぐ傍の席に座っていた売掛の人が、盛んに心配して話し掛けている。その場を見ていなかったので、どうしてそうなったのかは分からないけれど、何故か女子社員が高橋さんの両手を掴んで目の前に座り込んでいた。