天才ドクターは懐妊花嫁を滴る溺愛で抱き囲う
こちらがあたふたするのを楽しんでいる様子の彗だが、あの夜以降、彼が羽海の素肌に触れることはなく、それがさらに羽海を悩ませていた。
(御剣先生がなにを考えているのか、全くわからない。おばあちゃんから突然言われた結婚に、あんな条件をつけてくる人なのに……)
困惑と恥じらいがないまぜになりつつも、少しずつ惹かれていくのを止められない。
好きになってはダメだと戒めれば戒めるほど、彗のことを考えている自分に気付かされる。
いっそ『手近にいるから手を出しやすかった』とか『処女を抱いたことがないから興味があった』などと最低な発言でもしてくれれば目が覚めるのにと考えたが、そんな男ならば羽海自身が身体を許すはずもない。
(もしかして先生も私を……? いや、そんなわけないよね。あんなにモテそうな人が、わざわざ私を選ぶなんて……)
悶々と考えていたある時、たまたまふたりの休みが重なる前日に、彗からデートに誘われた。
「デート? 明日ですか?」
「あぁ。どこか行きたい場所はあるか?」
帰ってくるなり突然提案され、羽海は目を瞬かせる。
相変わらずこちらの都合を聞かず、出かける前提の強引な問いかけだが、行き先を羽海に委ねてくれることが嬉しい。
(どうしよう……でも、先生のことをもっとよく知りたい)
彗を知り、自分自身の気持ちを考えるチャンスだと思い、誘いを受けることにした。