天才ドクターは懐妊花嫁を滴る溺愛で抱き囲う
(このまま流されちゃダメだ。もっと自分を強く持たなきゃ。好きじゃない、好きになってなんかない……)
必死に言い聞かせていたはずが、その夜を境に羽海と彗の距離は加速度的に縮まっていった。
理由は、彗が驚くほど優しくなったからだ。
俺様でぶっきらぼうな口調は変わらないし、些細なことで意見が食い違うこともあるが、家事をすると礼を言われ、帰宅時間を連絡してくれるようになった。
夕食を作っているので帰宅時間がわかれば準備しやすく助かる反面、【今日は早く帰れそうだ】と届いたメッセージに対し【わかりました。今日は生姜焼きです】などと返信していると、まるで新婚夫婦のようで照れくさい。
【羽海の料理はなんでも美味い。早く食べたい】などと返ってきた日には、特製の生姜ダレをひっくり返しそうになった。
さらに彗は担当が違う貴美子の病室にも頻繁に顔を出し、気にかけてくれる。
人が変わったように優しくなったというよりは、表立っていなかった優しさをわかりやすく見せてくれるようになった。
家でも院内でも、顔を合わせれば上から目線で「いい加減、俺との結婚に頷け」と口説き、髪や頬に触れるなどのスキンシップを仕掛けてくるので、心拍数は上がりっぱなしで落ち着かない。
(女性に冷たいという噂はなんだったの?)
恋愛経験値の低い羽海にとって、いつまで経っても見慣れないほどイケメンでハイスペックな彗から日常的に口説かれるのは刺激が強すぎる。