天才ドクターは懐妊花嫁を滴る溺愛で抱き囲う

シャワーを浴びてすぐ布団に入ったが、目を閉じても浮かんでくるのは彗と過ごした時間。

初めての恋が、こんなにも波乱に満ちたものになるなんて考えもしなかった。

(おばあちゃんのように、ロマンチックな恋愛がしたかったのになぁ)

現実は最悪の第一印象に、騙し討ちのような同居のスタート。ほんの一瞬シンデレラになれたかと思いきや、一気に魔法が解け地獄に突き落とされてしまった。

羽海と結婚したら財団を継げるだなんて、まるでゲームの賞品みたいだ。

(ううん、賞品にもならない。単なるおまけ。財団を継ぐためなら、地味な清掃員くらい簡単に口説き落とせるってことかな……)

再びズルズルとネガティブな想像に思考が偏っていく。

たしかに初対面の時は不遜な態度に眉を顰めたが、それでも少しずつ歩み寄り、不器用な優しさに触れ、御剣彗という人をわかった気でいた。それが驕りだったのだろうか。

女性は身体を重ねると情が湧いてしまうと聞くし、羽海に至ってはすべて彗が初めてだったのだ。

反対に男性はなんの感情がなくても抱けるし、その場限りの快楽を楽しめれば、その後も情を引きずることはないらしい。

< 160 / 227 >

この作品をシェア

pagetop