天才ドクターは懐妊花嫁を滴る溺愛で抱き囲う
それなのに、自分がうまく結婚のきっかけについて説明できなかったせいで傷付け、初めてで不安だらけの羽海から妊娠の報告をする機会すら奪ってしまった。
それどころか、羽海の疑念になにも答えてやれないまま、彼女を傷つけた状態で家を出てきてしまったのだ。
(羽海のところに行かなくては)
すぐに理事長室を出ていこうと身を翻す彗を、隼人の焦った声が引き止める。
「ちょっ、待てよ! もしかして彗もあの子とヤッた? じゃあどっちの子かわかんないな」
「……なんだと?」
足を止めて振り返った彗に勝算を見出したのか、隼人は勝ち誇ったような顔で片方の口角を上げていやらしく笑った。
「地味でつまんない女だったけど、俺だってちゃんと抱いてやったんだ。あの女の子供がどっちかわかんない限り、俺にだって財団を継ぐ資格があるだろ」
腹の奥からフツフツと怒りが湧き上がるのをグッと押し殺す。
一刻も早く羽海の元に行きたいのだ。バカの相手をしている暇はないとばかりに隼人の言葉を切り捨てた。
「羽海のお腹の子の父親は俺だ」
「そんなのわかんないだろ。生まれた子供を調べたって、俺らのどっちが父親かなんて――」
「黙れ」