天才ドクターは懐妊花嫁を滴る溺愛で抱き囲う
彗は隼人の胸ぐらを掴み、刺し貫きそうなほど鋭い視線で睨みつけた。
「全DNAの配列解析をすれば、一卵性の双子だろうとどちらが父親かは特定できる。ただ一ヶ月ほどの時間と三百万という金額がかかるから、あまり一般には知られていないだけだ」
「な……」
「それ以上つまらない嘘で羽海を侮辱するなら、ただじゃおかない」
その事実を知らなかった隼人は悔しそうに唇を噛みしめるが、それでもまだ諦めず、彗だけ理事に就任するのは卑怯だなどと喚く。
「俺にはつまんねぇ仕事を押し付けておきながら、彗には女と理事就任っておかしいだろ! 御剣家の長男は俺なんだ! ばあさんが気に入った女と結婚して孕ませればいいんなら俺だって」
「隼人、お前……!」
三十路を迎える大の大人の言い分とは思えず、怒りが頂点に達する。
思わず拳を振り上げた彗だが、それまで静観していた多恵の毅然とした声音にぴたりと止まった。
「いい加減になさい」
祖母の静止で隼人の胸ぐらを掴んでいたのを解放したものの、手が震えるほどの怒りは収まっていない。