天才ドクターは懐妊花嫁を滴る溺愛で抱き囲う

「後日、改めて時間を設けて話しましょう。羽海さんにも連絡をしたのだけれど、まったく繋がらないの。財団の跡継ぎについてはもちろんだけど、この写真の真偽については当事者がいなくてはどうしようもないわ」
「どういう意味だ? ばあさんまで羽海を疑ってるのか」
「そうじゃないわ。私にも考えがあるのよ。でもそれには羽海さんにも話を聞かせてもらわなくては。この場ではなにも解決しないもの」

多恵の含みのある言い方に違和感を覚えるが、それより今は羽海と話がしたい。

その後、仕事を調整して急いで帰宅すると、今日は休みのはずの羽海の姿はどこにもなかった。

何度電話しても繋がらず、焦りからスマホを持つ手が汗で滑る。

病院にとんぼ返りして貴美子の病室へ顔を出したが、普段と変わらない様子だった。きっとまだ羽海の妊娠の話は知らされていないのだろう。

妊娠初期の母体に無理は厳禁。ストレスなんて以ての外だ。

なぜ隼人が羽海のエコー写真を持っていたのかはわからないが、彼女のお腹の子は自分の子だ。

(必ず誤解を解き、羽海の心を取り戻してみせる)

まだ居場所の知れない婚約者を想い、そう心に誓った。




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