天才ドクターは懐妊花嫁を滴る溺愛で抱き囲う

直接肌にあたるシーツの感触に違和感を感じ、羽海はゆっくりと瞼を上げた。

ブラインドが半分上がった窓からは朝の眩しい光が差し込んでいて、今日も暑い一日になりそうだ。

目に映るのは見慣れぬ観葉植物やサイドテーブルで、羽海は一瞬自分がどこにいるのか混乱したものの、身体の倦怠感と下腹部の痛みが、昨夜ここで起こった事実を生々しく語っている。

(そうだ。私、御剣先生と……)

首だけ動かして周囲を確認するが、ベッドにも寝室内にも彗の姿は見当たらない。

明るい場所でなにも身に着けていない無防備な姿を晒さずにホッとすると同時に、少しだけ落胆し、心がスッと冷えていく。

よく見る少女漫画の一夜明けたシーンでは、ヒロインの寝顔を優しい顔で見守るヒーローの図がお約束で、恋愛に理想を抱く羽海も、いつかそんな朝を迎える日がくるのを夢見ていた。

(なにガッカリしてるの。恋人じゃないんだから御剣先生が私の目覚めを隣で待つ義務なんてないし、彼の腕の中で目を覚ましたって気まずいだけなのに)

自らに言い聞かせながら手早く服を身に着けてリビングへ行くと、テーブルにメモが置いてあった。どうやら彗は病院へ向かったらしい。

【受け持ちの患者が急変した。行ってくる。身体が辛ければ休んでおけ】と記された下に、いかにも慌てて書いたような走り書きで【野間さんじゃない】と付け足してあった。

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