私のボディーガード君
「佐伯先生、次は私の話を聞いて下さい」
「はい。聞きますよ」

 さあ来い。また源氏物語を引用して答えてあげるわ。

「あの、恥ずかしい話なのですが」

 相談者の女子学生が躊躇うようにもじもじとする。

「大丈夫よ、笑ったりしないから。ねえ、皆もそうよね?」

 相談者の他に三名が同じテーブルに座っていて、問いかけに頷いた。

「あの、彼とのエッチの事なんですが、初心者なのでどうしたら男性が気持ち良くなってくれるかよくわからなくて。先生、男性が気持ちよくなる体位とか知っていますか?」

 ひゃー。エッチって……。
 まだ午前中よ。ここは大学よ。そんな恥ずかしい話、よく出来るわね。

「私も知りたいです。恋愛のカリスマの佐伯先生が普段、どんな風に恋人とエッチしているのか」

 興味持たれても困る。恋人もいないし、したこともない。
 それに源氏物語も体位どころか具体的な性描写はないし。

 私の恋愛の知識はほぼ源氏物語から得たものしかないのに、書いてない事を聞かないで頂戴。

「佐伯先生、教えて下さい」
「佐伯先生、是非、ご教授下さい」

 みんなのキラキラとした目が一斉にこっちを見る。

 みんなこういう話、普通に出来ちゃうの? 
 女同士とは言え、恥ずかしくないの?
 最近の子が大胆過ぎてついていけない。

 誰か助けて。
< 10 / 210 >

この作品をシェア

pagetop