私のボディーガード君
「一つ確認したいのだけれど、綾子さんは三田村君の気持ちをわかっていますか? 彼が私のボディーガードを辞めたいというのなら応じますが、私は彼に直接言われた事がありません」

綾子さんの目が泳ぐ。

「勇人様が佐伯先生に直接言うのは気まずいと思います。ですから、私が先回りをして」

やっぱりこの子は自分だけの考えでここに来たのか。

「三田村君は責任感が強くて、一度決めた事は守る人です。綾子さんの提案には応じられません」

綾子さんは信じられないものを見るような目で見てくる。

「それから三田村君はあなたの物ではありません。意志を持った人間です。彼の意志を無視するような発言はよくないと思いますよ」

「どうして、そんな酷い事をおっしゃるの?」

綾子さんが傷ついたようにくしゃっと顔を歪める。

「酷いのはあなたですよ!」

テーブルを強く叩くと、綾子さんが肩をびくっとさせ、大きな目はあっという間に涙に濡れる。意外と打たれ弱いよう。彼女の周りにはきっとイエスマンしかいないのだろう。

それにしても、この子は何でも自分の思い通りになると思っていて、母とそっくり過ぎる。私はこういう人の気持ちを自分の都合のいいように解釈して、勝手な事をする人間を断じて許せない。

しくしくと泣いている綾子さんにメラメラと怒りがこみ上がってくる。

それから小一時間説教をしてやった。
彼女は泣き切っていて、嗚咽を上げていたけど、容赦しなかった。

若林さんに「もうその辺で」と止められて、解放してやった。泣きながら研究室を出て行く華奢な後ろ姿を見て、少しやり過ぎたかと、冷静になる。

神宮寺家が報復して来たりして……。
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