私のボディーガード君
「重症ですね。佐伯先生も三田村も」

若林さんが、フッと小さな笑みを浮かべながら言った。
三田村君の名前に心臓がギュッと締め付けられる。

「三田村君がどうしたの?」
「いえ、何でもありません。先生、恥ずかしいから叫ばないで下さいよ」

釘を刺すように若林さんが二重の目で見る。

「叫んじゃダメ?」
「当たり前です」

若林さんと目が合って、クスクスと笑い合った。
今日は若林さんと打ち解けた気がする。

「三田村君がSPを辞めたのって、やっぱり綾子さんが原因なの?」

今だったら答えてくれるかもしれない。

「そういう事は三田村に聞いて下さい。個人情報をペラペラと口にするつもりはありませんから」

そうだよね。さすが若林さん。仲良くなっても話さないか。でも、軽々しく話さない若林さんは信用ができる人だな。

「ただこれだけは言っておきますが、三田村は優秀なSPでした。二十代の若さで総理の警備を務めた程ですから。親の七光りで総理の警備についたんだと妬む声も沢山ありましたが、そんな甘い世界ではありません。三田村は実力で勝ち取ったんです。私は三田村の事を誇りに思っています」

若林さんの言葉が真っすぐ胸に響いた。三田村君を心から尊敬しているんだと伝わってくる。

きっと、若林さんと三田村君はいい仕事仲間だったんだろうな。

「さて、余計なお喋りはこれでお終い。佐伯先生、ドライブを続けましょう」
若林さんが歩き出した。
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