私のボディーガード君
海ほたるを出て、アクアラインを木更津方面に進むと、若林さんは高速から降りて、市街地の方へと車を走らせた。

どこに行くのか聞いても「秘密です」としか若林さんは言わない。私はカーナビを見ながら推理するしかない。

もしかしてアウトレットでお買い物? なんて思ったけど、違った。テーマパーク? とも思ったけど、また外した。

そして辿り着いた場所は大学病院。
若林さんが駐車スペースに車を停め、「降りて下さい」と言った。

どうして大学病院に?

そう思っていたら、コンコンって後部座席のドアが叩かれた。
ドアを叩いたのは三田村君!

ネイビーのスーツ姿の三田村君がドアの外に立っている。

三田村君の姿に心臓が大きく脈打つ。

会えた事は嬉しい。ドアから飛び出て行って、抱き着きたい。
だけど、三田村君に酷い言葉をぶつけてしまった。三田村君の顔を見るとイライラするとか、感情的にさせないでとか、他にもいろいろと……。

三田村君、私に怒っているかも。
勝手に三田村君の素性も調べたし。

「佐伯先生、三田村の話を聞いてやって下さい」

後部座席でどうしたらいいかわからず、もじもじしていたら、若林さんが口にした。

「実はこちらに先生をお連れするように三田村に頼まれたんです。三田村もいろいろと反省する所があったと言っていました。佐伯先生も三田村に言いたい事があるんでしょ? 海に向かって叫ぶよりも本人に伝えたらどうですか?」

海に向かって……って。
一気に顔が熱くなる。

いや、無理、無理、いきなり本人に告るってハードル高すぎだから!
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