私のボディーガード君
次の日、謝罪に相応しい黒いジャケットとワンピース姿で、神宮寺製薬に行った。

神宮寺製薬の本社ビルがあるのは日本橋で、江戸時代から薬問屋が多く集まる界隈にあった。

本社前まで来て、100メートル以上は高さがある高層ビルを思わず見上げる。
何階まであるんだろう? 少なくとも20階以上はありそう。

「敷地面積はおよそ千坪。地上25階、地下3階になっています」
私に合わせてくれたようなキリッとした黒スーツ姿の三田村君が教えてくれた。

日本橋に千坪の土地を持ち、その上に25階建ての自社ビルを建てるなんて、神宮寺製薬の繁栄を象徴するような立派なビルだ。

そう言えば、神宮寺製薬の昨年の売り上げは1兆円以上だった。国内の製薬業界で1、2位を争う規模らしい。

綾子さんが傲慢な考え方をするようになるのもわかる気がする。

広々とした1階のロビーに行くと、ダークグレーのスーツ姿の秋山さんが私たちを待っていた。手には菓子折りらしき紺色の紙袋があった。これから綾子さんに謝罪しに行くと思ったらやっぱり面白くない。

「来ないかと思いましたが、ちゃんと来たんですね」
秋山さんが私に言った。

「秋山さん一人に行かせる訳には行かないでしょ。それに、私も聞きたい事が出来たから」

「聞きたい事?」

秋山さんが意外そうに眉を上げた。
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