私のボディーガード君

母は深刻な副作用について知っていたんだろうか？
知っていたからこそ優真に使わせなかったんだろうか？

母はどういう経緯で知る事になったんだろう？
それに倉田浩介はなんで母を脅しているんだろう？　恨みを持つならクビにした神宮寺製薬の方だと思うけど。

そう言えば昨日、脅迫状の事を神宮寺製薬の社長が言っていた。

もしかして、神宮寺製薬にも倉田浩介からの脅迫状が届いているって事？

脅迫状には何が書いてあるんだろう？

千葉のホテルに届いた手紙には確か『22年前の恨みは忘れない』とあった。22年前の恨みってなんだろう？

考えれば考えるほど、疑問が膨らむ。
倉田浩介に直接聞けたらいいんだけどな。

ふと窓の外を見た時、中禅寺湖が見えた。
初めて来たはずなのに、その景色に見覚えがある。

写真で見たのかな？

いや、違う。

昔、来た事があるような……。
ズキッと頭の奥が痛んだ。

痛い。頭痛に襲われて頭を抱える。

「妃奈子さん、大丈夫ですか？」

三田村君の声がした。
大丈夫だと答えたいけど、声が出ない。

頭の中に車に乗っている映像が流れる。

――あの湖は中禅寺湖って言うんだよ。

窓の外を見る私に男がそう言った。
私は後ろの席に座らされて、手も足も縛られていた。

――もう少しでおじさんの家に着くからね。いい子にしていればお母さんが迎えに来るから。

ルームミラー越しに男の顔が見える。
その顔を今の私は知っている。

まさか、そんな……。

怖い……。
助けて……。

恐怖でガクガクと体中が震える。

「妃奈子さん、聞こえますか？　妃奈子さん、しっかりして下さい」

三田村君の声……。

しっかりしなきゃ。

「妃奈子さん、妃奈子さん！」

顔を上げると眉間に皺を寄せ、心配そうに私を覗き込む三田村君の顔があった。

三田村君の顔を見て涙が滲む。