私のボディーガード君
 夜7時。大学から私の運転する赤い車体のBMWのミニで友美と一緒に行きつけの『カラオケ紫式部』に向かった。

 助手席に座る友美は昼間のジーパン姿とは違って、お洒落なAラインのコートにワンピース姿。いつも後ろで一本にまとめている髪も編み込みのハーフアップになっている。かなり気合いが入っているよう。

「友美、なんか気合い入ってない?」
「だってイケメンくんに会うんだもーん♪」

 はは……。

 そう言えば友美は大のイケメン好きだった。
 私にくっついて来たのはイケメンにつられたからだ。どおりで積極的だと思った。

「和也さんが聞いたら悲しむよ」
「旦那はご飯で、イケメンはデザートなの」
「何それ?」
「イケメンは別腹って事。いいじゃない。イケメンに会うぐらい。生活の潤いを求めて何が悪いの?」
「やっぱりイケメンだって聞いたからくっついて来たんだ」
「私は自分の欲求に正直に生きているのよ」

 全く、友美は……。

 正々堂々と言い切った友美にもう何も言う事はない。
 まあ、そんな友美のおかげで男性に興味が持てるようになったんだけど。

 あの事件が切っ掛けで男性に拒絶反応が出るようになったのは中学生の頃からだった。見るのも怖かったけど、友美が毎日のようにイケメン男性アイドルの写真を見せるから、自然と怖いという気持ちはなくなり、気づけば男性を普通に見られるようになった。そして源氏物語と出会った事で男性に憧れを抱くようにもなった。
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