私のボディーガード君
「野郎!」
 地面に転がった髭面の男が立ち上がって向かってくる。
 コートの男が素早く動いて、髭男を投げ飛ばし、髭男はまた道路に沈んだ。

「アニキに何するんだ!」
 髭男と一緒にいたヤクザ風の若い男がナイフ持って襲ってくる。 
 コートの男がその男の手首を掴んで軽々と放り投げる。

 あっという間に二人も……。
 強い、このコートの人。

 脇から三人目の体格の大きな男が出て来て、コートの人を襲う。

「危ない!」

 私が叫んだタイミングでコートの人が大男のパンチを避けて、大男を蹴り飛ばす。あっけない程簡単に大男が地面に倒れた。

 スラッと背が高くて、大男よりも、髭男よりも細いのにコートの人の強さは圧倒的過ぎる。

「お前ら、まだやるか? 今度は急所を外さないからな」

 コートの人の言葉に三人の男たちはよろよろと立ち上がって、「覚えてろ」と言って逃げていった。

 背を向けていたコートの人がこっちを振り返る。
 黒髪に、キリッとした端整な顔立ち。

 うそ……。
 捜していた彼だ。

「お怪我はありませんか?」

 優しい聞き方に涙ぐみそうになった。
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