私のボディーガード君

脅迫事件のはじまり

三田村勇人(みたむらはやと)と申します。お連れしたい場所があります。一緒に来て下さい」

 そう言われて、よく知らない人についていってはいけない、という事を小学生でも知っているけど、暴漢から助けてくれたし、悪い人には見えないし、それに先日のお礼も言いたいしって事で、三田村さんが運転する黒のSUVに乗った。

 連れて来られた場所は帝国ホテル。

 クリスマスの装飾がされたホテル内に入り、二階のパーティー会場まで行って、やっぱり知らない人にはついて来てはいけないと悟った。
 会場前には厚生労働大臣、佐伯洋子主催のクリスマスパーティーの案内が大きく出ている。

 クリスマスイブに見たくない名前……。

「どういう事ですか?」
「大臣、いや、お母様に頼まれました」

 無表情に三田村さんは言った。
 母の差し金と聞いて、うんざり。最近は母が私に干渉してくる事はなく、平和だったのに。

 母に会ったらお見合いをして結婚しろか、大学を辞めて母の秘書になれと言われるに決まっている。

 政略結婚も嫌だし、政治家にもなりたくない。

「帰ります」
 パーティー会場に背を向けた時、親しみのあるハスキーな声に呼び留められた。

「妃奈子ちゃん、久しぶりだね」
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