私のボディーガード君
謝った方がいいかな……。

でも、なんか素直になれないって言うか。熱のせいかな。それで普段よりイライラするのかな。せっかく今日は太平洋に愚痴を聞いてもらったのに、また悶々としている。

ため息をつくと、三田村君が顔を上げた。

「すみません。俺、いや、私が妃奈子さんを不快にさせているんですよね。熱があって辛い時に弱音を言われても気分が滅入りますよね。今、言った事は忘れて下さい」

申し訳なさそうにこっちを見た三田村君と目が合って、胸が苦しくなる。こんな風に三田村君に言わせている自分にも腹が立ってくる。

三田村君、そんなに悪いと思わないで。今日は灯台楽しかったし、シーフードカレーも美味しかったし、三田村君のおかげでとっても楽しかったよ。

風邪をひいたのは三田村君のせいじゃないよ。はしゃぎ過ぎた私がいけないの。三田村君、何度も寒くないですかって聞いてくれたのに、大丈夫、大丈夫って、冷たい風に当たっていた私が悪いの。

そう言いたいのに、胸の内側に言葉がひっかかって言えない。

「お粥が届きました」

インターホンに出た三田村君がベッドの側までお粥を持って来てくれた。

「では、妃奈子さん、お粥を食べて、薬を飲んで、またお休みになって下さい。何かありましたら連絡を下さい。今度は中からではなく、外のドアから参ります」

深々と私にお辞儀をすると、三田村君はドアの方に向かった。

三田村君が行ってしまう。
私、ちゃんと謝ってないのに。

「待って」

ベッドから立ち上がると、足に力が入らず、よろけた。
頭もくらくらする。

「妃奈子さん!」
三田村君が駆け寄ってくる。

「失礼します」
そう言って、三田村君が私の肩を掴んで支えてくれた。
いつもだったら鳥肌が立つはずなのに、全然気持ち悪くない。

良かった。三田村君は大丈夫なんだ。
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