私のボディーガード君
海沿いのホテルから三田村君の叔父さんの家までは車でほんの10分ほどだった。竹藪に囲まれた敷地内に入ると二階建ての家と、その隣に道場らしき平屋の建物があった。

車から降りると、優しそうな小柄な中年女性と、熊みたいにがっしりとした体格の中年男性が家から出て来た。

きっと三田村君の叔父さん夫婦だ。

叔父さんの姿に頭の中でアラームが鳴る。

「おっちゃん、久しぶり。これお土産」
三田村君が私の不安を察したように、紙袋を叔父さんに渡して、私から遠ざけた。

「おっちゃんの好きな銘柄の酒買って来たから」
三田村君の言葉に叔父さんがニコッと笑った。その表情が少し三田村君に似ている。

「勇人、またでっかくなったんじゃないか」
叔父さんが三田村君の肩を叩きながら豪快に笑った。

「さすがにもう身長は止まったよ。おっちゃん、急にごめん。一泊だけ世話になります」

「遠慮するな。ここはお前の家でもあるんだから、いつでも来いって言ってるだろう」

叔父さんと三田村君の親し気なやり取りを見ていたら、張り詰めていた気持ちが緩んで来た。ここは大丈夫だ。

「寒いですから、中にどうぞ」
傍に立っていた三田村君の叔母さんの案内で、芳ばしいお醤油の匂いがする家の中にあがった。
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