パーフェクトな警視にごくあま逮捕されました
「でも、駒木さんがすぐに来てくれたから……!」

あのとき、私には駒木さんがまるで、ヒーローに見えた。

「ごめんね、もっと早く駆けつけられたら、たんこぶ作らないで済んだのに」

そっと、確認するかのように彼が私の後頭部に触れる。
それにううんと首を振った。

「たんこぶだけで済んだから、よかったです」

駒木さんが近くにいてくれてよかった。
心の底から、そう思う。

「駒木さんは私の、ヒーローです」

真っ直ぐに、レンズ越しに彼の目を見つめる。
気持ちを口にするなら今だってわかっていた。
けれど、コンペもあんな結果に終わり、本当に私がこんな彼を好きになる資格があるのかわからない。

「僕が花夜乃さんのヒーロー?
それは光栄だね」

眼鏡の向こうで目尻を下げ、眩しそうに駒木さんが私を見る。

「僕は花夜乃さんのためなら、ヒーローでも犯罪者にもなるよ」

「……犯罪者はダメです」

冗談めかして笑っている駒木さんの鼻を摘まんだ。
今日、わかった。
この人は私のためなら躊躇なく罪を犯す。
そこまでの深い愛情は重い。
重いけれど、それだけ愛されているのだと感動すらしそうになる。
しかし、彼に罪を犯させるわけにはいかないのだ。
私がしっかり、しなければ。

< 184 / 219 >

この作品をシェア

pagetop