パーフェクトな警視にごくあま逮捕されました
「今日、櫻井さんに怪我をさせましたが、大丈夫なんですか」

「花夜乃さんはあんなヤツの心配をするのかい?」

不快そうに駒木さんの眉間に、深い皺が刻まれる。

「ち、違います!
いい気味……とか、ちょっと思ってますけど」

性格が悪いと思われそうで、上目で彼をうかがう。
しかし普通みたいなので大丈夫そうだ。

「それより、駒木さんが上司とかからお咎めがあったり、反対に櫻井さんから訴えられたりしないのかなって、心配で」

「花夜乃さんが僕の心配をしてくれた!」

さっきまでの不機嫌はどこへやら、ぱーっと駒木さんの顔が輝く。

「大丈夫だよ、示談で済ませるようにあとで書類を渡すからね」

「はぁ……」

もしかして、お金で解決しようとしている?
そしていまさらながら、この人は大抵のことが、お金で解決できる人なのだと気づいた。
ますます犯罪行為をしないように、私が気をつけなければ。

「でも、花夜乃さんが、僕は花夜乃さんのヒーローって言ってくれて嬉しいな」

本当に嬉しくて堪らないらしく、駒木さんは満面の笑みだ。

「どんなことがあっても、僕は花夜乃さんを守るからね、安心していいよ」

それはとても嬉しいけれど、彼を犯罪者にしないための責を背負うのは重かった。
でも、それが彼の愛の重さだっていうのも、知っている。
どうしたら私は、それに釣りあうだけの人間になれるのかな――。
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