喪服令嬢は復讐劇の幕を開ける~バカ王子が盟約を破ったので遠慮無く滅ぼさせて頂きます~

「玉座の間に行くわよ」
「えー、元婚約者は放っておいて良いのかい?」
「ええ。ここで殺してしまっては面白くないもの」
「そっか。じゃあ、最短距離で飛ぶよ」

 私を軽々と抱き上げて転移魔法で一気に玉座へと向かった。抱き上げる必要があるのか謎だったが、口を出すと面倒なので身を任せる。
 それよりもまず国王に会う方が先決だ。
 あの男には返して貰わなければならないものがある。今も身につけている九つの指輪の奪還。

 一瞬で玉座の間に辿り着いたのだが、さすがに大聖堂の鐘の意味に気付いていたのか近衛兵(ロイヤル・ガード)が出迎える。
 一斉に私とソロモンめがけて銀の槍が飛ぶ。棘で防ごうとしたが、その前にソロモンは背を向けて槍に貫かれた。
 赤銅色の鮮血をまき散らして、その場に崩れ落ちる。
 彼から離れて私は優雅に着地した。
 まったく面倒な男だ。

「や、やったか!?」
「ああ! ピクリとも動かない」
「あとはあの女だけだ!」

 歓声を上げて喜ぶ近衛兵(ロイヤル・ガード)に対して、奧の玉座には王と王妃が座っていた。
 いい身分だ。
 でも、その場にお前たちはふさわしくない。

 指を鳴らした直後、漆黒の棘が巨大な津波となって近衛兵(ロイヤル・ガード)を一掃した。数が多かろうと関係ない。
 王と王妃は悲鳴を上げたが、玉座から離れる様子はないようだ。王族としての矜持だろうか。どうでもいいけれど。

「お久しぶりです。国王様、王妃様」

 ドレスの裾をつまんで腰を落とす。完璧な淑女の礼に王と王妃は息を呑んだ。
 この一礼はここに嘗て存在していた女神(サラティローズ)様に対してであって、王と王妃に敬意を払って頭を下げたのではないのだが、二人は未だ自分たちの方が立場は上だと勘違いしたのだろう。

「あ、ああ……。面を上げるがいい」
「メアリー嬢、今回の件は息子にも落ち度があります。ですから」
「そ、そうだ。我らは女神のことを慕いつねに感謝を──」

 あの息子にしてこの親ありと言ったところだろう。私は彼らの話に耳を傾けずズカズカと階段を上がって玉座に向かう。既に側近たちは棘に囚われて動けない。

「じゃあ、最後のチャンスをあげましょう」
「おお!」
「この国に恩恵をもたらした女神様の名前を言えるの?」
「──ッ!」
「でしょうね。じゃなきゃ女神様の力が衰えるわけ無いもの。貴方たちは何に向かって強請っていたのかしらね。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()
「それは──」

 玉座まで上り詰めたのち王と王妃を棘によって拘束し、女神様の力を奪った忌々しい黄金の指輪を両腕ごと粉砕した。これで女神(サラティローズ)様の力も全て私の中に戻ってくる。
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