幼馴染御曹司と十日間の恋人契約で愛を孕んだら彼の独占欲が全開になりました
帰り道
 そのあと十分ほどで目暮とは別れた。

 ちょうど父から「もうすぐ着く」と連絡があって、沙也は安堵してしまった。

 いくら助けをもらったようなものだといっても、多大なる緊張はあったから。

「もしもなにか、お役に立てることがございましたら、名刺の番号へ」

 だが目暮は、どこまでも優しかった。

 沙也に最後、そう言ってくれて、沙也はそこでやっと、名刺に電話番号が書いてあったのだと思い当たった。

「ありがとうございます。もしものときは、そうさせていただきます」

 だから少しだけ、まだ作った微笑だけど、笑みの形に表情を動かすことができた。

 目暮もそれに安堵したように表情を緩め、それで「では」と、あの車で去っていった。

 そのあとファミレスの駐車場で父の車を待つこと、十分ほど。

 目暮が先に帰ってくれたのは良かった、と沙也は目を覚まして少々ぐずり気味だった洋斗をあやしながら思った。

 目暮とばったり会ってしまったら、父になにか察されないとも限らない。

「待たせたか?」

 父の車が滑り込んできて、沙也はすぐに乗り込んだ。
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