幼馴染御曹司と十日間の恋人契約で愛を孕んだら彼の独占欲が全開になりました
「ううん。ありがとう」

 軽くお礼を言っただけで、車はそのまま発進し、道へ戻る。

 あとは一時間弱、走ったら沙也の住んでいるマンションだ。

 車中は普通の会話だった。

 父は訪ねていった親戚のことを話したし、沙也は知っている相手だったので、それなりに楽しく聞いた。

 でも自分のことに関しては、曖昧にしてしまった。

「海、とっても綺麗だったよ。洋斗はすごくはしゃいじゃってね。それで今、くたびれちゃったみたい」

 話したのはそのくらいだった。

 その洋斗は後部座席に取り付けてあるチャイルドシートに乗り、再び落ち着けたので、また静かに眠っている。

 泣いては可哀想なので、そうならなくて安堵した沙也だった。

 そのまま車は順調に高速道路を走り、予定通りの時間で家に辿り着いた。

「お父さん、今日は本当にありがとう」

 起こさないよう、気をつけながら洋斗を抱いて車から降り、沙也は運転席の父に改めてお礼を言った。

 父は微笑で首を振る。

「いいや。沙也とひろくんが楽しめたなら良かったさ」

 いつも読んでいる呼び方で洋斗の名前を口に出した。
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