鬼の子
その甘い声に理性が飛びそうになる。綱くんに言われるがまま、キスをしてしまいそうだ。
私を見つめる瞳には、そのくらいの力があった。自分の中の残された理性を掻き集める。
「・・・ずるいよ」
「俺ってずるいの?」
返事の代わりにコクン、と頷くと手を引っ張られて、また彼の腕の中にすっぽりと収まった。さっきと違うのは、息が止まりそうになるほど、ぎゅっと強く抱きしめられていること。
「・・・・つ、綱くん?少し苦しいよ・・・」
「茜もずるい。離れたくなくなる」
1度緩んだ腕の力は、ぎゅっと、また強くなった。この抱きしめられる痛みが綱くんの弱さと愛だとしたら、息が止まるまで抱きしめられてもいい。
・・・・本気でそう思った。
———私も離れたくない。
この温もりを離したくない。
「・・・話を聞いてもらっていい?」
ギリギリまで迷っていた、鬼の子の呪いの話をしようと決心がついた。
「どうした?」
キスをしそうな距離は離れたけれど、同じベッドに向かい合わせで座っている。その距離は近い。
両思いって、ただ喋る時もこんなに距離が近いのかな・・・。恋愛初心者の私は、胸のドキドキが収まることはなかった。