カクテル

今日はいつもと違って嬉しいお酒だから、このまま意識を無くすだろう。

と言う考えが甘かった。

タクシーを拾って麻理さんの自宅に帰ると、さっき迄の彼女が別人のように元気になっていた。


ごめん麻由ちゃん、操を守る自信がないよ。


「圭悟、喉乾いたー、水」
「はい、どうぞいくらでも」

「ぷあー、生き返った、よーしやるぞ」

ドキっ 何をかなー、


「圭悟!将棋やろー」

「はい? 将棋ですか? エッチじゃなくて?」

「やだ、もうしたくなったの? まだ21時だよ、
まずは頭の体操からねっ」

次は何の体操ですかー?


「圭悟、負けたら罰ゲームだからね」

麻理さん知らないと思うけど、僕は将棋は強いんです。


「レベルが違いすぎるとつまらないから、私は飛車角落ちでいいから」

「えっ、麻理さんそんなに強いんですか?」

「私、素人に負けた事ないから」

「・・・」


麻理さんは、一体何手先まで読んでるんだろう。
全く歯が立たない、僕の王様は外堀を埋める様に丸裸にされてしまった。

「参りました」

物事を何でも理詰めで考える麻理さんには朝飯前かも知れない。

「圭悟、負けたから罰ゲームね」

麻理さんが何を言い出すか身構えてしまう。

「あー、ちょっと待ってください、喉が渇きました」

独り住まいにしては大きめの冷蔵庫を開けると、
綺麗に並べられた飲み物や食材が目に入った。

お酒ばっかりだし、、

ふと扉のポケットに目をやると、

なんでこんなものが冷蔵庫に、、

すると背後で麻理さんが、低い声で
「圭悟、何やってるの?」

「わーー、ビックリするじゃないですか」

「どうかしたの?」

「あ、いや、冷蔵庫には不釣り合いなものがあるなぁって」

僕は指を指して、麻理さんに問いかけた、

「あぁ、コンちゃんね、冷たい方がいいらしいよ〜」

「ほんとですか? 聞いた事ないですけど」

「使ってみる?」

「い、いえ全然、全く、大丈夫です」

狼狽えて日本語がおかしくなってしまった。

急いで缶ビールを取って扉をしめた、後ろ手で扉を押さえながら、冷静を装う。

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