私を包む,不器用で甘い溺愛。

記憶の鍵のネックレス

        有栖side




「ね,じ,甚平くん……」



自分がいたら嫌なんじゃと提案したこなつちゃんに,それ以外の取り乱し様を案じた私達は,彼女を自宅に返した。

そして1人で帰すには少し危険だったのでタクシーを呼び,自分は残った。



「大丈夫。まだ一応検査したりで入院は決定したけど,一先ず命の方は大丈夫らしい」

「そう,なの……お医者様が言うなら,大丈夫よね……? 良かった,まだ中の方は分からないんでしょうけど,外傷がそんなに大きくないって事でしょう?」

「多分な。何とか保護者の電話番号見つけ出して,直ぐに来ると言うことらしい」



保護者……

そうだわ,私ったらすっかり忘れて……

心配するに決まってる。

それに,榛名くんを標的にしていたとはいえ,私を庇っての事だもの。

そうじゃなかったら,きっとこんなに大事にはならなかった。

私が考えなしに飛び出て,そのあともぼんやりしていたから……

なんとお詫びすればいいんだろう。

榛名くんにも,保護者の方にも。

それに,榛名くんの話を聞いたばかり。

両親揃っていらしたら,どんな顔をすればいいのかいよいよ分からない。

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