迷惑をかけた相手になぜか溺愛されたようです。

その日の午後、私は今日も先輩から間違えを指摘されて大目玉を食らってしまった。

いつものように凹みながら、涙目でパソコンの画面とにらめっこをしていた。
しかし、営業課では私以外なぜか皆がソワソワとしているようだ。

私にねちねちと文句を言っていた先輩達も、ソワソワとしながら、なぜか化粧直しに余念がない。
なにがあるのかと思っていた時。

「花宮さん、ちゃんと間違え直しておいてね。私達は一階のロビーに行ってくるから。」

「…はい。いってらっしゃいませ。」

先輩たちの行動は、全く意味が分からないが、逆にいないほうが落ち着いて仕事ができる。
私は少しホッとしていた。

先輩たちが、いそいそと一階に向かった後、少しして一つ下の後輩の男の子が近づいて来た。

「あんなに張り切ったって、雲の上の人っすよね!…そう思いませんかぁ?」

「っえ!雲の上の人って誰?なんの話?」

「先輩!!知らないんっすか?今日フランスの本社からうちの会社のCEOが来てるらしいっすよ。イケメンCEOを、ひと目でも見たいらしくて、あわよくば声かけてくれないかって、女性陣は朝からずっと浮かれてるんっすよ。」

「へぇ~そうなの。」

「花宮先輩は、本当に興味ないんっすか?男性社員も敏腕で、完璧な仕事をするっていうCEOを実際に見てみたいと言ってみんな行っちゃいましたよ。できる男を一目見たいってね!僕は平凡で楽に暮らせればいいんで、そういうの興味ないんっすよ。」

(…私もこの会社の商品にしか興味ない。イケメンCEOは写真もよく見たこと無いし、私には遠くの存在だし関係ない人だ…)

唯は少しの間静かになったオフィスで一人カタカタとキーボードの音を響かせていた。


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