迷惑をかけた相手になぜか溺愛されたようです。

**************


唯は冷蔵庫の前で缶ビールを一気に飲み干すと、急に何か言葉にならないような感情が込み上げて来た。
自分がまるで水の中に入ってしまったように、視界がゆらゆらと揺れている。
目じりからは温かいものが止めどなく流れている。


「もぉ…なんでよ…なんでなのよ!バカ!」


大きな声は薄暗い部屋の中に響き渡った。


しかし、悪い事はなぜか続くものだ。
これでもかというほどの事態がこの後に起こるのだ。

散々泣いて、泣き疲れた唯がやっとベッドに横たわった時だった。。
部屋の中に居るのに、なぜか顔に冷たいものが当たる感じがする。
まるで雨にあたっているようだ。


「夢の中でも雨に濡れるとは…ついてない…。」


小さな声で呟いていると、顔に当たる水がさらに大粒になってきた。
唯は慌てて目を開けた。

すると、こともあろうに天井の継ぎ目や蛍光灯など、あらゆる場所から水かポタポタと水滴になって落ちて来ているではないか。


「…大変!!上の階から水漏れじゃないの!?」


唯は慌ててベッドから飛び起きると、椅子に置いてあったカーディガンを羽織り階段を駆け上った。
そして、ちょうど真上の部屋の前にたどり着き、ドアの横に付いているベルを押した。



ピンポン、ピンポン、ピンポン・・・・。



しかし、中からは物音もせず、誰も出て来る気配が無い。あるいは寝ているのだろうか。

唯はむきになって、ベルを何度も押し続けた。
おまけにドアもバンバンと叩いてみる。



バンバン、バンバンバン!



「すいません!!誰かいませんか!!」

すると、ドアの前でガタンとなにか物音がした。

(…よかった!誰かいる。)

ドアのカギを開ける音がカチャリとすると、ドアはゆっくりと開けられたのだ。
そして、そっとドアの隙間から顔を出したのは、10代後半くらいの男の子だ。


「…だれ?…なんか用?」


男の子は気だるそうに目をこすりながら口を開いた。
寝ていたのだろう、ボサボサの髪に目が半分しか開いていない。
Tシャツにスウェット姿。
しかし、よく見ると日本人離れしたくっきりとした目鼻立ちに、髪は薄茶色にちかい金髪で、くるくると柔らかいカールが付いている。


「み…み…水漏れなの!!お風呂とか洗面とか、水出しっぱなしじゃない!?」


男の子は私の慌てた様子に驚いて目が覚めたようだ。


「え…うち?…まじか…」


急いで部屋の中に入って行った男の子は、数秒後に大きな叫び声を出した。


「お姉さん!!大変だよ!!…ちょっと来て!!」


私は男の子の声を聞いて慌てて部屋の中に入ってみた。


「おっ…おじゃまします!!」


声はバスルームのようだ。
声のする方に近づくと、すでに床は水浸しになっている。


「…ねえ、大丈夫?水は止まったの?」


少しして、男の子は顔色を悪くして、バスルームから出て来たのだ。


「お姉さん…ごめんなさい。…僕、シャワーを出したままゲームに夢中になっちゃって、そのまま寝落ちしたみたいなんだ。」


男の子は泣きそうな顔をしている。
泣きたいのはこっちの方だ。





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