迷惑をかけた相手になぜか溺愛されたようです。
私は冷蔵庫の前で缶ビールを一気に飲み干すと、急に何か言葉にならないような感情が込み上げて来た。
自分がまるで水の中に入ってしまったように、視界がゆらゆらと揺れている。
目じりからは温かいものが止めどなく流れている。
「もぉ…なんでよ…なんでなのよ!バカ!」
大きな声は薄暗い部屋の中に響き渡った。
しかし、悪い事はなぜか続くものだ。
これでもかというほどの事態がこの後に起こるのだ。
散々泣いて、泣き疲れた私がやっとベッドで眠りについた時だった。
部屋の中に居るのに、なぜか顔に冷たいものが当たる感じがする。
まるで雨にあたっているようだ。
「夢の中でも雨に濡れるとは…ついてない…。」
小さな声で呟いていると、顔に当たる水がさらに大粒になってきた。
私は慌てて目を開けた。
すると、こともあろうに天井の継ぎ目や蛍光灯など、あらゆる場所から水かポタポタと水滴になって落ちて来ている。
「…大変!!水漏れじゃないの?」
私は慌ててベッドから飛び起きると、カーディガンを羽織り階段を駆け上った。
そして、ちょうど私の上の部屋の前にたどり着き、ドアの横に付いているベルを押した。
しかし、中からは物音もせず、誰も出て来る気配が無い。あるいは寝ているのだろうか。
私はむきになって、ベルを何度も押し続けた。
おまけにドアもバンバンと叩いてみる。
すると、ドアの前でガタンとなにか物音がした。
(…よかった!誰かいる。)
ドアのカギを開ける音がカチャリとすると、ドアはゆっくりと開けられたのだ。
そして、ドアの隙間から顔を出したのは、10代後半くらいの男の子だ。
「…だれ?…なんか用?」
男の子は気だるそうに目をこすりながら口を開いた。
寝ていたのだろう、ボサボサの髪に目が半分しか開いていない。
Tシャツにスウェット姿。
しかし、日本人離れしたくっきりとした目鼻立ちに、髪は薄茶色にちかい金髪で、くるくると柔らかいカールが付いている。
「み…み…水が出てない!!お風呂とか洗面とか!?」
男の子は私の慌てた様子に驚いて目が覚めたようだ。
「え…うち?…まじか…」
急いで部屋の中に入って行った男の子は、数秒後に大きな叫び声を出した。
「お姉さん!!大変だよ!!…ちょっと来て!!」
私は男の子の声を聞いて慌てて部屋に入ってみた。
「おっ…おじゃまします!!」
声はバスルームのようだ。
声のする方に近づくと、すでに床は水浸しになっている。
「…ねえ、大丈夫?水は止まったの?」
少しして、男の子は顔色を悪くして、バスルームから出て来たのだ。
「お姉さん…ごめんなさい。…僕、シャワーを出したままゲームに夢中になっちゃって、そのまま寝落ちしたみたいなんだ。」
男の子は泣きそうな顔をしている。
泣きたいのはこっちの方だ。