悪役令嬢は、家族の専属業火担!!~すみません、同担は拒否したします。~

私、家族の専属業火担になる!!

「萌々ちゃんはやくっ!」

「ばか、そんなに走ってたら転ぶでしょーがっ。」

「だって、だって、シオン様が待ってるんだもんっ。いやー、尊い!!!」

推しが待つ同人誌会場へと駆け足で向かっているのは私、七瀬心(ナナセココロ)。
乙女ゲーム『きらびやかな貴族の恋人』、略して『きら恋』の大ファンだ。
推しは攻略対象で公爵子息のシオン·ライラット様。
もう尊いといしか言いようがない!
美しく、優しく、一途で、嫉妬深くて、ちょっと腹黒なところがもう最高で…………と、それはまた今度。
今は会場へ急がなくちゃっ。

「何言ってんのさ。ロイド様だって待ってるつーのっ!忘れたら許さないからね…。」

とても物騒な事を言っているこの子は、白浜萌々(シラハマモモ)。
私の親友で同じく『きら恋』の大ファン。
が、推しは攻略対象で第一王子のロイド·アルファーノ様。
要するに、相容れない関係ということだ。

まあ、それも今は置いておこう。
電車に乗り遅れたら大変だ。

「あ、まだ電車の座席空いてるよ。良かったあ。遅れたら萌々ちゃんをしばいてたよ。」

「えっ、こわっ。冗談に聞こえないんだけど。というか、ここの駅はマイナーだから今日乗るのなんて、私たちだけだと思うよ。」

「えっ!まじで?ってかさー、シオン様がーーーーー、」

萌々ちゃんと二人で推しのトークで盛り上がって、同人誌の会場に着くーーはずだった。

ガッタンーー。

突然電車が大きく揺れ、傾いた。

「えっ、嘘でしょ。何何何っ!?」

そしてーーーーー、

バキバキバキ、ドゴッ、ガッシャーーン。

電車は横転し、形も残らなくなるほど粉々に崩れていった。

まだ良かったことといえば、この電車内の乗客は私と萌々ちゃんの二人だけだったことくらいだろう。

(ああ、こんなところで死んじゃうのか。
せめて、今日のイベントでシオン様を一目見たかった………。)

こうして私、七瀬心の人生は終わった。
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