捨てられた令嬢はチートな精霊師となりまして
 たぶん、生前のゼルマというのは本人の言う通り尽くすタイプで世話焼きの人間だったのだろう。話を聞いている限り、彼女の恋人は相当なダメンズだった。
 この部屋の向かい側の部屋が、ゼルマの私室だ。私室といったところで、ゼルマがそこでどう過ごすのかという問題は出てくるけれど、プライベートなスペースはあった方がいいと二人でそう決めた。
 しかも、「家賃を払えない分働く」と言い出したために、家事は大半ゼルマが引き受けてくれている。イオレッタの想像していた一人暮らしとはかなり大きくずれてしまったけれど、今はこの生活が楽しい。
「御飯、ありがとう」
「いえいえ、どういたしまして。味見はしてないけどね!」
 イオレッタが顔を洗って階下に降りた時には、テーブルの上には朝食が並んでいた。
 味見はできないけれど、ゼルマの味付けは完璧である。優しい味付けのスープとパン。スープには卵が落としてある。
 誰かと一緒に過ごす時間が、こんなにも心温まるものだなんて想像してもいなかった。
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