捨てられた令嬢はチートな精霊師となりまして
 いや、とトラヴィスは首を横に振った。いずれにしても、もう降りることはできないのだ。
 一度、ベルライン伯爵の手を取ってしまった。だから、トラヴィスだけ途中下車だなんて、できるはずはない。
 
 * * *
 
「なんなんだ、あいつは! クソ! 偉そうに!」
 スィア湖でクライヴと再会してから五日。
 いまだにエグバートの怒りはおさまってはいなかった。もともと、エグバートとクライヴの仲が良好だったというわけではない。
 エグバートの方が先に生まれたというのに、クライヴはエグバートを敬ったことは一度もなかった。
 学問も剣術も乗馬も。エグバートが苦労して身に着けたそれを、クライヴはやすやすとこなしていく。
「天才だ」と父の招いた教師達がクライヴを褒めたたえているのを何度聞かされたことだろう。この国の王太子はエグバートだというのに。
 不幸なことに、エグバートもさほど出来が悪いというわけではなかった。
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