捨てられた令嬢はチートな精霊師となりまして
 むしろ、そう思いたかったのだろう。クライヴが罪を犯せば、王位継承権者から外される。そうしたら、誰もクライヴに王位をなんて言い出さないだろうに。
 ――それなのに。
 王位継承者の地位を安泰にしようと向かったドラゴンの住まう地に、どういうわけかクライヴは先回りしていた。それだけではなく、人々のために悪しきドラゴンを退治しようとしたエグバートをあざ笑い、恥をかかせようとした。
 城に逃げるようにして戻ってきたが、父からも「ドラゴンには手を出すな」ときつく言い渡されてしまった。
 カリカリカリカリ……部屋の中に響くのは、エグバートが爪を噛む音。こんな癖、子供の頃に直したと思っていたのに。
「――殿下。面会の者が来ております」
「予定はなかっただろう? 帰らせろ」
「それが――ラタント王国のベルライン伯爵と申しておりまして。クライヴ殿下にかどわかされた令嬢を助け出してほしい、と」
「かどわかされた? クライヴが貴族令嬢を?」
 侍従の言葉に、思わずエグバートは立ち上がる。
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