推しは策士の御曹司【クールな外科医と間違い結婚~私、身代わりなんですが!】スピンオフ

モブらしく

 次の朝
 ベッドから起きてすぐチェストの上に飾ってあるダイヤをチェックする。
 しっかりある。やっぱり夢じゃなかった現実だった。この狭い部屋に置いていていいものか、いっそ銀行の貸金庫とか考えた方がいいのか、いや、やっぱり身近に感じていたい。それよりなにより、至近距離でありがとうございます。イケメンすぎました専務。昨夜の興奮を思い出して朝から溶けてしまいそう。推しの存在が私を幸せにします。今日も専務の為に頑張ります。
 職場に行くと色んな人から「昨日はおめでとう」と、声をかけられて少し照れながら返事をし、浮かれないように当たり前だけど平常運転で仕事に励む。専務に迷惑をかけてはいけないので、私は職場でこの推し心は封印していた。

 「合コンどうだった?」
 忙しかったのか、私がそろそろ席を立とうかと思っていた社食で、芽愛ちゃんはサラダだけを持って目の前に座った。私の問いかけに芽愛ちゃんは頬をふくらませて「イマイチだった」と返事をする。
「名刺はいっぱいもらったけど、なーんか……イマイチで、家に帰って参加賞もどきの日本酒飲んで寝た」芽愛ちゃんは可愛い顔してお酒に強くザルだった。
「ダイヤ外れたしさー」
「すいません」
「いや、咲月に当たってよかったよ」そう言ってにっこり笑う。何だかんだで優しい芽愛ちゃんだ。
「他の人なら呪ってた」続けてそう言ったので前言撤回だ。やっぱり怖い。
「でも日本酒美味しかったよ。専務の彼女の会社みたい」サラダを突きながら芽愛ちゃんはそう言うので「えっ?」と声を出してしまった。
「可愛い子みたいだよ、見たことないけど。私より劣るとは思うけどね、専務ぐらいなら山ほどいる彼女のひとりじゃない?」
「あっ……そうなんだ」
「あれだけのイケメンなら沢山いるでしょう。でも結婚相手はどこぞのお嬢様を選ぶ気がする」
「だよね」
 うん。そうだけど……うん。いや、そうだよね。うん……うん。うなずきながら呼吸を整える私だった。
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