推しは策士の御曹司【クールな外科医と間違い結婚~私、身代わりなんですが!】スピンオフ
「芽愛ちゃんはさ」
「うん」
「タワマンが夢なんだよね」
「そうそう。タワマンに住んでベンツで子供を私立幼稚園に送迎するの」将来を語る芽愛ちゃんは目がキラキラしている。
「玉の輿なら専務でもいいとか?」自分から推しの話をふるのは心音が上がってしまう。こんな話をして申し訳ありません専務。ドキドキしながらそう聞くと「それはないない。ありません」芽愛ちゃんはサラリと私にそう言った。
「ないの?」
「うん。うちの専務はレベルが違う。いくら私でも現実味がない。国内外にホテルを構える御曹司だよ。そしてあの外見、非の打ち所がないでしょう。いくら私でも狙えない」
「そっか」
 
 さすがの芽愛ちゃんでもそう思うのか。うつむいていたらテーブルに置いていた私のスマホが震えた。
「あっ琉希だ」つい口に出すと芽愛ちゃんの顔がニタニタ笑っていた。
「その顔やめなさい」
「なに?なに?お誘い?」
「いや違う。今度の同期会の会場で、行ってみたいお店があるから下見に付き合って欲しいって内容」スラーッとラインを読むとそんな感じだったので芽愛ちゃんに教えると「お誘いだー」と騒がれた。
「違うって、ただの下見だよ。芽愛ちゃんも行く?三人で行こうって書いて……」
「ダメダメダメ!琉希に怒られる」私が芽愛ちゃんも一緒にと打ち込もうとしていたら、必死に止められた。
「琉希は咲月とふたりで行きたいんだよ」
「違うって」
「咲月さぁ」綺麗な顔での説教モードは迫力がある。
「琉希はきっと咲月に気があると思うの。いや否定しない!」口を挟もうとすると先に言われてしまった。
「琉希は真面目でけっこうイケメンで、評判もいいよ。常務の甥で出世もアリかも」
「うん。それはわかってる。けど、私なんかに……」
「出た自己評価底辺女め!怒るよ本当に!口の中にレタス詰め込むよ!」本気で怒ると怖いのはわかってます。
「咲月が嫌ならいいよ。友達って思うなら別にこのままでいいけど、なんかお似合いで、琉希はグイグイタイプだから咲月を引っ張ってくれそうで、その自己評価が低いのも少し上がるかなーって、私が勝手に思っていたの」サラダを混ぜながら芽愛ちゃんはしんみりとそう言った。

「咲月はいい子だから、自分が思うより可愛くておススメの女の子だから、私の友達だから楽しく過ごして幸せになってほしいなぁ。なーんて思ったりして」ツンデレ芽愛ちゃんは優しい女の子です。
「ありがとう」心からそう言って頭を下げると「まぁ私の方が可愛いけどね」と照れ隠しに高笑いをする。私はその気遣いに感謝してもう一度「ありがとう。でも幸せだよ私」そう答えた。
 推しのいる生活は幸せしかありません。でも、たまにリアルを見つめることになって……ちょっとだけ寂しい時もあります。
「琉希に返事しといたら?会場決めないと同期会も遅くなっちゃう」
「うん」
 私は互いのシフトが合うときなら大丈夫と返事をしてスマホを閉じた。
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