推しは策士の御曹司【クールな外科医と間違い結婚~私、身代わりなんですが!】スピンオフ
それから何事もなく数日が過ぎる。
2月に入って街はバレンタイン一色となる。仕事帰りにショーウィンドを見ながら、明日は琉希とお店の下見だったなと、ウィンドウに映った自分の姿を確認した。初めてのツーショットだけど、普通の服装でいいよね。お店もカジュアルなイタリアンだから大丈夫なはず。
芽愛ちゃんに意識するような事を言われたけれど、私の心はそんなに踊らず、あくまでも下見としか考えられない。ツーショットで食事をしたら少し変わるのだろうか。イケメンとのお食事なんだから、もう少し心が踊ってときめいてもいいのにと、自分で思ってしまう。
新年会の出来事を一瞬でも思い出すと、すごくすごくときめいてしまうのに。推しって本当に最強だ。
駅に向かう途中で大きなコーヒーショップがあり、その手前で女子高生ぐらいの女の子が身体を押し合いながらキャーキャーと歓声を上げ、楽しそうに笑って「やば、カッコいい」「もう一回通る?」とか盛り上がっていた。若いなぁ楽しそうだなぁと、まだ20代後半だけどおばあさん気分で通り過ぎる瞬間……ありえないものを見てしまった。
ウィンドウに何か感じてしまった。ありえないほどのオーラを感じて横を向くと、そこに専務が座っていた。
ありえない。
いやちょっと、待って待って!えっ?待って!思いっきり目を大きくして、真剣に二度見をするけど見間違いではなかった。間違いなく……専務だった。
通路側のカウンターに腰を掛けて座っている。組んだ足が長すぎる。まっまぶしいっ!イケメンオーラが窓ごしに溢れている。こんな気軽にみんな見える席に座ってはダメですっ!って、どうしてこんな場所にいるのですか?
専務はこちらに向けて、軽く手を振っている。誰に向かって手を振っているんだろうと、私は周りを見渡すけれど、その様子を見て専務は笑顔で私を指さした。
私?私ですか?
自分で自分の胸元に指を置くと、専務はもっとニッコリ笑ってうなずいた。破壊的笑顔が私を殺す。それから今度は手招きをする。だから私は歩く歩道にでも乗ったように、頭を真っ白にさせてコーヒーショップに知らないうちに入ってしまった。
新年会ふたたびの心境だった。