推しは策士の御曹司【クールな外科医と間違い結婚~私、身代わりなんですが!】スピンオフ
 注文もせずにすいませんの気持ちと共に、小さくなって専務の元へ向かうと、専務はごくごく自然に「フロントの木戸咲月さんですよね、コーヒー付き合ってもらえますか?」と聞くので私は何も考えず「はい」と返事をして流れにのってしまった。
 気軽に返事をした後で気持ちの混乱が止まらない。えっ?どうして?どうしてこの流れ?こんなことがあるなんて、また気持ちの準備もなくふわふわしてしまいそう。
 「ありがとう。奥に移動しましょうか?何にします?」専務は自分のカップを持って席を立とうとするので「自分で持ってきますから大丈夫です」と、焦って動きを止めた。私の飲み物を買ってこさせるなんて、恐れ多くてとんでもない話だ。しかし専務は「僕が誘ったんですよ。コーヒー?ラテとかにします?」優しいいつもの笑顔を見せるので、私は逆らえず「ホットのカフェラテで」と反射的に答えてしまう。
「了解です。では奥の席で座って待っていて下さい」
 チェーン店のコーヒーショップなのに専務が動くと優雅だと、その動きを見ながら私は奥に移動してコートを脱いで深呼吸した。
 これは現実なのだろうか……。

 「おまたせ」と専務がやってきてカフェラテを私の目の前に置き「僕も二杯目」と笑顔を見せてくれた。
 まぶしい……やっぱり輝いている。近すぎる。ただのモブには近すぎる距離だった。ドキドキが止まらない。危険だ。
「木戸咲月さん」
「はい」
 専務はコートを脱ぎながら、私に手を伸ばすので息が止まった。長い指先が私のニットの首筋に触れそうで魔法をかけられたように動けなくなる。その長くしなやかな指先が私の首筋に触れるか触れないかぐらいのタイミングでまた柔らかい笑顔を見せて「ブルガリは嫌いでしたか?」そう言った。
「いいえ!そんなとんでもありません。自分には高価すぎて」
「せっかくだから着けなきゃ」
「着けていて落としたらと思うと気軽にできなくて」
「落としたらまた買ってあげますよ」
 クスリと笑ってアントワネット様発言をする。さすが御曹司。
「きっと木戸さんに似合います」優しく言われて頬が熱くなった。
< 16 / 68 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop