推しは策士の御曹司【クールな外科医と間違い結婚~私、身代わりなんですが!】スピンオフ
 このままいくと、また新年会の二の舞でふわふわ浮かれてしまうだろう。専務に失礼にならないように頑張ろう。
「仕事帰りですか?」そう聞かれたので「はい。少し寄り道して遅くなりました」と返事をする。壁の時計は午後8時を過ぎていた。
「僕は大丈夫だけど、お腹空いてませんか?何か追加しましょうか?それとも場所を変えましょうか?」
「いえ、そんな気を使わないで下さい」こんなモブキャラに王子様が気をつかうなんてとんでもない話だ。
「帰り際にクロワッサンの差し入れがあって、食べてきたんです」そう答えたら専務は「それはよかった」と微笑んだ。
 甘い……近距離で見る専務は全て甘い。声も微笑みも仕草も佇まい(たたずまい)も全て甘い。クリームとメイプルシロップをたっぷりかけたパンケーキ並みの甘さだ。私は糖分でがんじがらめになる前に、専務に「専務はどうしてここに?」と質問をしてみた。
 
 すると少し小首をかしげて「家に帰りたくなくて」と、返事をされて私はポカンと口を空けてしまった。
 想定外の答えに返事ができない。家に帰りたくないと?
「怒られた小学生みたいですね」思わず素直にそんな失礼な言葉を出してしまったけれど、専務は「本当ですね」と、楽しそうに笑っていた。
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