推しは策士の御曹司【クールな外科医と間違い結婚~私、身代わりなんですが!】スピンオフ
もう5年前になるけれど、入社式で初めてその姿を見た衝撃は忘れられない。
背が高くて顔が小さくて、会社のイメージモデルかと思っていたら、社長の息子の御曹司と聞いて、周りの女子の息を飲む声が聞こえた気がした。
こんな素敵な人がいるんだ。遠く離れた場所でもキラキラしている。いや本当にキラッキラしていて、地方から出てきた私にとっては眩しくて、都会って凄い!と、わけのわからない感動が生まれていた。
それから何度か遠くから見る機会があるけれど、私のイメージは5年間変わらず、御曹司専務はキラキラな人だった。
なんだろう、オーラがとにかくある。
上品で穏やかで優しくて、楽しそうで嫌な顔を見せたことはない。ツーブロックの髪も爽やかなモデル体型で、ブランドスーツが良く似合う。端正な顔立ちだけど、目が少したれていて、そこがまた……キュンとなってしまう。
フロントの従業員には遠い遠い存在だけど、憧れるのは自由だよねと、私は仲良しの芽愛ちゃんにもこの秘めた心を内緒にしている。あまりにも世界が違うので誰にも言えないでいた。ただ心の中の王子様として、お話したこともない雲の上の専務には申し訳ないけれど憧れている。