推しは策士の御曹司【クールな外科医と間違い結婚~私、身代わりなんですが!】スピンオフ
 仕事が終わってロッカーに行き着替えていると、ちょうど専務から電話がきた。私の行動を見透かされている。なぜ?どうして?ついキョロキョロと周りを見渡してしまう。専務専用の監視カメラとかないよね。
『仕事終わりましたか?』
「はい。今終わって着替えてます」
『今日もお疲れ様でした。裏口で待ってます』
「あの……」
 切られた。マイペース過ぎますよ御曹司さん。急いで着替えを終わらせて、ロッカーの鏡で顔をチェックした。
 メイク直そうかな。まとめていた髪をおろして手早く直す。
 ドキドキしている。落ち着こう。御曹司の気まぐれみたいなものだから、浮かれないで現実を見つめてキラキラに負けるな!ムードに流されるな!推しは推し!
 
 そう思ってみても
 裏口に停めてあった高級車から、私を見つけて優しい笑顔で車から降り、助手席の扉を開けてくれる専務を見ると、もう負けムードになっている自分に気づく。落ち着け自分。
 革張りのシートが心地よい。シートベルトをすると「おつかれさまでした」と、温かいラテを渡してくれた。
「ありがとうございます」
「いいえ。さて、お姫様」
「えっ、はい…。いえ……」王子様にお姫様呼びされて、驚きでうろたえてしまう。
「ドライブしましょう」
 そう言って車は静かに走り出す。推しの王子様と一緒に夜のドライブ。
 浮かれないようにするのは無理かもしれない。
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