絶対にずっと好きだと証明しましょう
2人が抱き合っている姿が容易に想像できる。
楓と健夫は顔を曇らせ、同時に息を漏らした。

「健夫君はそれでも美幸さんが好きなんだ」
「好きだし絶対に彼女を落として見せるという信念をもって追いかけている」
「すごいね」
「楓ちゃんこそ。樹君に文句言わないの? 他の女と浮気するなって」
「だって本当に浮気しているかわからないし、わからないのに突き詰めるのやだし。だいたい浮気ってなんだろう。もし樹が他の人とそういうことしていたとしていたら、きっと樹にとってそれは大したことじゃなくて、樹が大したことじゃないと思っていることに文句を言っても意味がない気がする」

健夫が楓をまじまじと見る。

楓の回りくどい説明に「ばかじゃないの」とあきれているのか「へえー」と納得しているのかその視線から察することはできず、楓はエアコンで冷えてきた腕をさすりながらアイスティーに口をつけた。
同じ学部の生徒が数人連れだって入ってきて、健夫と楓に気づいて手を振ってきたので、楓も小さく振り返した。
視線を健夫に戻すとまだじっと楓を見ている。

「なによ」

楓が怪訝な顔をすると健夫は「いやさ、そうなんだよ、男にとってセックスって特別な人とは特別なんだけど、でも体だけっていうのもありありなんだよ。特に若いうちなんて、体が年中ムラムラしているわけよ。喉が渇いて水を欲するように、愛はなくても体が求めるわけよ。機会があればやっちゃうわけよ。のど乾いた、水がある、いただきます、みたいな。だからといって文句を言う意味がないと思える楓ちゃんてすごいなと思って」と、わけわからない自分勝手な解釈を述べて頷いている。
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